ビブラートとは?意味・仕組み・英語での表記

ビブラートとは、ひとつの音を伸ばしているあいだに、音程を周期的に上下させて声を波のように揺らすテクニックです。まっすぐ伸ばす声(ストレートトーン)に比べて響きに厚みと余韻が生まれ、バラードのサビ終わりや演歌の語尾などで聴き手の感情を揺さぶります。ビブラートって何?と聞かれたら、簡単にいえば「伸ばした音をきれいに震わせること」ですが、ただ声が震えているのとは違い、揺れの速さと幅がそろっていることがポイントです。

ビブラートの意味と語源(何語?英語では?)

ビブラート(vibrato)はイタリア語で、「震わせる・振動させる」を意味するラテン語の vibrare が語源です。英語でも同じつづりの vibrato がそのまま使われ、発音は「ヴィブラート」に近くなります。日本語では「ビブラート」「ヴィブラート」の2つの表記がありますが、指している技法は同じで、違いはカタカナ表記の好みだけです。中文(中国語)では「颤音」と書きます。

日本語での言い換え・他の言い方としては「声を揺らす」「揺らし」「声の震え」などがあります。ビブラートみたいな言葉として混同されやすいのが、音量を揺らす「トレモロ」と、言い回しとしての「オブラート」です(後者は本記事の最後の章で扱います)。ビブラートの歴史は古く、クラシックの声楽や弦楽器では何百年も前から装飾として使われてきました。現在はポップスやロック、演歌、アニソンまで、ジャンルを問わず使われる基本テクニックです。

ビブラートの仕組みと原理:揺れの速さと揺れ幅

ビブラートの原理は、声帯の張りや息の圧力をわずかに強めたり弱めたりすることで、声の高さを「狙う音程の少し上」と「少し下」のあいだで往復させることです。波形で見ると、音程の線が一定の周期で上下する波になります。聴き手に心地よく聞こえるかどうかは、次の2つで決まります。

  • 速さ(周期):1秒間に何回揺れるか。歌では1秒に5〜7回前後が自然とされることが多く、これより速いと細かく震えた声に、遅いと音程がふらついた声に聞こえやすくなります。
  • 揺れ幅(深さ):上下にどれだけ振るか。目安は上下に半音弱程度で、幅が小さいと浅いビブラート、大きいと深いビブラートになります。

もう一つ大切なのが、揺れの中心が狙った音程からずれないことです。波の中心が音程に乗っていれば、揺らしていても音程は正しく聞こえます。

ビブラートの波形と、揺れの速さ・揺れ幅の関係 1周期=速さ 上下の幅=深さ 点線=狙う音程 目安:1秒に5〜7回、上下に半音弱の揺れ
ビブラートは狙う音程を中心にした波。1往復の長さが速さ、上下の幅が深さを決める

ビブラートの効果:なぜかける?なぜ必要?

ビブラートをかける理由は大きく3つあります。1つ目は、ロングトーンに動きが出て、同じ音を伸ばしていても単調に聞こえなくなること。2つ目は、フレーズの終わりに余韻が生まれ、感情が乗って聞こえること。3つ目は、揺れによって響きが豊かに感じられ、声が伴奏に埋もれにくくなることです。揺れによって声に含まれる倍音の聞こえ方が変わり、自然な「ゆらぎ」が生まれることで、機械的でない人間らしい声に聞こえるとも言われます。カラオケ採点でもビブラートは加点の対象になっています。

ただし、ビブラートは必須ではありません。ストレートな声で歌うことを選ぶ歌手も多く、曲によってはかけない方が合う場面もあります。「必要なときに、狙った速さと幅でかけられる」状態を目指すのがゴールです。

ビブラートとトレモロの違い

トレモロは、音の高さではなく音量(強弱)を細かく揺らす技法、または同じ音を細かく連打する奏法を指します。ビブラートが「音程の波」なのに対して、トレモロは「音量の波」です。実際の歌声のビブラートでは音程と一緒に音量もわずかに揺れているため、両者は厳密には切り離せませんが、言葉としては「高さを揺らすのがビブラート、強さを揺らすのがトレモロ」と覚えておけば十分です。

ビブラートの出し方・かけ方|簡単なやり方の手順とコツ

ビブラートの出し方(やり方・かけ方・出す方法)は、いきなり揺らそうとするのではなく「まっすぐ伸ばす → ゆっくり揺らす → 速さをそろえる」の順に進めるのがいちばん簡単です。ビブラートを入れる・付ける(付け方・つけかた)という言い方もしますが、どの言い方でも手順は同じです。「どうやって出すの?」「どうやるの?」と迷っている人のために、ここでは誰でもできる基本の方法(仕方)を紹介します。

ステップ1:まっすぐなロングトーンを作る

ビブラートの土台は、揺れのない安定したロングトーンです。ロングトーンとは、ひとつの音を一定の高さと大きさで長く伸ばすこと。「あー」と楽な高さで5〜10秒伸ばし、途中で音程や声量がぶれないかを確かめます。まっすぐ伸ばせない状態で揺らすと、揺れと不安定さの区別がつかなくなります。息が続かない人は、先に腹式呼吸で息の量を安定させましょう。詳しい練習はロングトーンの出し方の記事で解説しています。

ステップ2:2つの音をゆっくり往復する

次に、伸ばしている音と、それより半音ほど高い音をゆっくり行き来します。「あ〜あ〜あ〜」と1秒に2回くらいの遅さで、わざと大げさに上下させるのがコツです。この段階ではビブラートというより音程の往復練習ですが、「どこを動かすと音程が揺れるか」の感覚をつかむのが目的です。

ステップ3:速さをそろえて少しずつ上げる

往復の速さを一定に保ったまま、1秒に3回、4回、5回と少しずつ速くします。速くするほど上下の幅は自然に小さくなり、ビブラートらしい揺れに近づきます。1秒に5〜6回で、幅がそろった波が続けば完成形です。

  1. 楽な高さの「あ」で5秒まっすぐ伸ばす
  2. 半音上の音とゆっくり往復する(1秒に2回)
  3. 往復を1秒3回→4回→5回と上げていく
  4. 最後に、まっすぐ伸ばしてから揺らす「後がけ」で歌に入れる
ビブラートを身につける4ステップの順番 1 まっすぐ5秒伸ばす 2 半音上とゆっくり往復 3 往復を1秒3→4→5回へ 4 後半だけ揺らして歌に入れる
ロングトーン → ゆっくり往復 → 速さをそろえて上げる → 後がけ、の順に進める

綺麗な出し方のコツ:母音・タイミング・力み

  • 母音は「あ」「お」から:口の中が広い母音は揺れが作りやすく、「い」「う」は喉が締まりやすいので慣れてから練習します。
  • タイミングは音の後半:伸ばし始めはまっすぐ、後半からビブラートをかけると自然に聞こえます。歌い出しからすぐ揺らすと、音程が定まっていないように聞こえます。
  • 喉を固めない:揺らそうとして喉に力を入れると、細かく震えるだけの声になります。肩や首をゆるめ、息の流れは止めないようにします。

ビブラートをきかせる歌い方ができているか、ビブラートが効いてるかどうかは、録音して聴き返すのがいちばん確実です。揺れが一定なら「効いている」、途中で揺れが止まったり速さが変わったりするなら、ステップ2〜3に戻ってゆっくり練習しましょう。

横隔膜・喉・顎:どこでかける?ビブラートの種類(かけ方の違い)

「ビブラートはどこを揺らすのか」「どこでかけるのか」「どこで出すのか」は、指導者によって説明が分かれるテーマです。一般には、揺れを作る場所によって横隔膜ビブラート・喉ビブラート・顎ビブラートの3種類に分けて説明されます。実際の歌唱では複数が組み合わさっていることも多いのですが、違いを知っておくと練習の方向が決めやすくなります。

横隔膜ビブラート(お腹・みぞおちで揺らす)

横隔膜ビブラートは、息を吐く力を「強・弱・強・弱」と波打たせて声を揺らすやり方です。みぞおちのあたりに手を当て、「ハッ・ハッ・ハッ」と短く息を押し出す動きを、つなげて滑らかにしていくイメージで練習します。腹から揺らすので喉に負担がかかりにくく、ゆったりした深い揺れが作りやすいのが特徴です。一方で、速い揺れは作りにくく、腹筋を固めすぎると揺れが止まります。

「横隔膜でビブラートは嘘」と言われる理由

「横隔膜でビブラートをかけるのは嘘」という意見もあります。横隔膜は息を吸うときに働く筋肉で、自分の意思で1秒に5回も細かく動かせるものではない、という理由です。実際には、お腹まわりの筋肉で息の圧力を揺らし、その変化で声帯の振動が揺れていると考えるのが自然です。つまり「横隔膜ビブラート」は、息の圧力を波打たせる方法の通称だと理解しておけば問題ありません。喉と横隔膜の違いは、揺れの発生源が声帯側か息側か、という違いです。

喉ビブラート(喉でかける・声帯で揺らす)

喉ビブラートは、喉を揺らす感覚でかけるやり方で、喉の中の筋肉の働きで声帯の張りを細かく変え、音程を揺らすやり方です。ポップスの歌手が使う速くて自然なビブラートの多くはこのタイプで、上達すると揺れの速さや深さを細かくコントロールできます。ただし、喉を力ませて無理に揺らすと、細かく不規則に震える「ちりめんビブラート」になりやすいので注意が必要です。揺らしているときに喉仏が上下に大きく動く・喉が動くのが見えるなら、力みすぎのサインです。

顎ビブラート(顎・口を動かす)

顎ビブラートは、顎を小刻みに上下させたり口を動かしたりして、口の形の変化で声を揺らすやり方です。見た目で揺らしているのがわかり、演歌やものまねで誇張して使われることもあります。簡単に揺れを作れる反面、顎が動くと言葉が崩れやすく、顔や頭を振る癖がつくこともあるため、メインのかけ方にはおすすめしません。

ビブラートを作る3つの場所と揺れの特徴 顎・口 見た目で揺れる/言葉が崩れやすい 喉・声帯 速く自然/力むとちりめんに お腹・息 深くゆったり/速い揺れは苦手
上から顎・喉・お腹(横隔膜まわり)の順に、揺れを作る場所と特徴をまとめた図

かけ方の使い分け

初心者は、息で揺らす横隔膜ビブラートで「揺れる感覚」をつかみ、慣れてきたら喉の力を抜いたまま自然に揺れる喉ビブラートへ移るのが一般的な順番です。顎や口を動かす方法は、揺れの感覚を知るきっかけとして一時的に使う程度にとどめましょう。喉の奥や舌の付け根に力が入ると揺れが止まるので、舌の脱力もあわせて意識すると安定します。どの方法でも筋肉を痛めるほど力む必要はありません。痛みや違和感が続く場合は練習を休み、長引くときは耳鼻咽喉科に相談してください。

ビブラートが自然にかかる人・かかりすぎる人の悩み

ビブラートは練習して身につける人がいる一方で、特に意識しなくても勝手にかかる人もいます。逆に「無意識に出すぎる」「つけすぎてくどいと言われた」という悩みもよく聞かれます。この章では、自然にかかる理由と、ビブラートを減らしたいときの方法をまとめます。

自然にかかる・ビブラートが多い人は生まれつき?

歌うと自然にビブラートがかかる人は、生まれつきの才能というより、息の流れと喉の脱力のバランスが最初から取れていることが多いと考えられます。息をしっかり流しながら喉がリラックスしていると、ロングトーンで声帯の振動が自然に揺れ始めるためです。合唱や声楽の経験がある人、子どもの頃からよく歌っていた人に多く見られるのもこのためです。

ビブラートができる人割合はどのくらいか、という信頼できる統計はありません。ただ、ボイストレーニングの現場では「最初から自然にかかる人は少数派で、多くの人は練習で身につける」と説明されることが一般的です。今できないことを気にする必要はありません。

ビブラートが多すぎる・出すぎるときの減らし方

ビブラートがめっちゃ出る、たくさん出る、ビブラート出しまくる状態は、それ自体が悪いわけではありません。問題になるのは、すべての音にかかってしまう、ずっと揺れている、という場合です。短い音にまで揺れがつくと音程が不安定に聞こえ、歌声全体がわざとらしい印象になります。ビブラートをかけない方法・なくす方法の練習は次の通りです。

  1. ロングトーンを「まっすぐ3秒 → ビブラート2秒」のように、揺らす区間を自分で決めて伸ばす
  2. まっすぐ伸ばす区間だけを録音し、揺れが混ざっていないか確認する
  3. 曲の中で「ビブラートを入れる音」に印をつけ、それ以外はまっすぐ歌う
ロングトーンの中で揺らす区間を決める例 まっすぐ(3秒) ビブラート(2秒) 0秒 3秒 5秒
前半3秒はまっすぐ、後半2秒だけ揺らす。揺らす区間を自分で選べれば、かけすぎもかけ忘れも直せる

揺らす・揺らさないを自分で選べるようになると、かけられない状態もかけすぎの状態も同時に解消します。

「くどい」「うざい」「気持ち悪い」と言われる原因

ビブラートが嫌い、うざい、気持ち悪いと感じる人がいるのは、多くの場合かけすぎか、揺れ方が不自然なときです。具体的には次のようなケースです。

  • すべての語尾に同じビブラートをつける(くどい・わざとらしいと感じられる)
  • 揺れが速すぎて細かく震えている(ちりめんビブラート)
  • 揺れ幅が大きすぎて音程が上下に外れて聞こえる
  • ビブラートで音程の甘さをごまかしている

最後の「ごまかし」は特に注意が必要です。まっすぐの音程が取れないのを揺れで隠すと、聴く人にはかえって不安定さが伝わります。

ビブラートなしでも上手い歌手はいる

ビブラートを使わない、またはほとんど使わない歌手でも、上手いと評価される人はたくさんいます。まっすぐな声は歌詞がはっきり届き、透明感や素朴さを表現できるからです。歌の上手さはビブラートの有無ではなく、音程・リズム・表現が曲に合っているかで決まります。ビブラートはいらない、と感じる曲ではかけなくていい、というのが正しい考え方です。

ビブラートができない・出ない原因と対処法

「どうしてもできない」「何回やっても出ない・出せない」という人は、原因がどこにあるかを切り分けると練習の方向が見えてきます。ビブラートが難しい・むずいと感じる理由は、たいてい次の4つのどれかです。ビブラートが出ない人や苦手な人は、自分がどれに当てはまるか確認してみてください。

原因1:ロングトーンが安定していない

まっすぐ伸ばした声が安定していないと、揺らしてもビブラートにならず、ただ声が震えるだけになります。息が途中で足りなくなる、音程がじわじわ下がる、という人はここが原因です。対処法は、ビブラートの練習をいったん止めて、10秒のロングトーンを安定させることです。揺れの土台ができるまでは、ビブラートは出ないのが普通です。

原因2:喉や体が力んでいる

揺らそうとするほど喉が固まり、揺れが止まってしまう人は多くいます。喉を固めたまま出せる揺れは、速くて不規則な「もどき」の震えだけです。首や肩を回してから歌う、口を軽く開けて顎の力を抜く、といった脱力が対処法になります。揺らす場所がわからない人は、横隔膜ビブラートのように息で揺らす方法から入ると、喉の力みを避けられます。

原因3:揺れの速さや幅をコントロールできない

ビブラートがかかっても安定しない、途中で止まる、速さがばらつく場合は、コントロールの練習不足です。よくある悩みと対処法を表にまとめます。

悩み起きていること対処法
揺れが浅い・短い揺れ幅が小さく、すぐ止まるゆっくり大きく往復する練習で幅を広げてから速くする
深くしたい幅が足りない半音上との往復を意識的に大きく取る
早くできない・早くする方法が知りたい往復のリズムが遅いままメトロノームに合わせて1拍2回→3回→4回と上げる
揺れが速すぎて震える喉の力み速さを落としてゆっくりから作り直す
音程がずれる揺れの中心が下がる・上がるまっすぐの音と交互に歌い、中心を確認する

原因4:音程の揺れがわからない

自分の声が揺れているのかわからない、という人も少なくありません。歌っている本人には、骨を伝わる音で自分の声が実際と違って聞こえるためです。録音して聴き返す、音程が線で表示されるアプリで波形を見る、といった方法で、揺れを目で確認しましょう。音程そのものが不安な人は、ピッチ(音程)の取り方から見直すのも近道です。

ビブラートができない4つの原因と対処の対応 原因 対処 ロングトーンが不安定 10秒の直線練習 喉・体が力む 脱力して息で揺らす 速さ・幅が乱れる メトロノームで往復 揺れが聞き取れない 録音・アプリで見る
できない原因は4つのどれか。原因ごとに練習の方向が決まる

ビブラートができない=下手ではない

ビブラートができないからといって、歌が下手だということにはなりません。プロの歌手にもビブラートをほとんど使わない人がいますし、下手くそに聞こえる原因の多くは、音程やリズムのズレのほうです。ビブラートは「つかない」ことより「無理につけて音程が崩れる」ことのほうが印象を悪くします。焦らず、ロングトーン → ゆっくり往復 → 速さをそろえる、の順番を守れば、多くの人がかけられるようになります。

ビブラートの種類(揺れ方のタイプ)とこぶし・しゃくりとの違い

ビブラートの種類は大きく2種類の分け方があり、前の章で紹介した「どこでかけるか」のほかに、「どう揺れるか」でも分けられます。揺れの速さ(速い・ゆっくり)と揺れ幅(浅い・深い)の組み合わせで印象が大きく変わるため、曲に合うタイプを選べることが上達の目安です。ビブラートのタイプは何がいいか、何型がいいかという絶対の正解はなく、曲調との相性で決まります。

浅いビブラートと深いビブラート

タイプ揺れ方合う曲・印象
浅くて速い幅が小さく、細かく速く揺れるポップス、アップテンポ。軽く華やかな印象
深くてゆったり幅が大きく、ゆっくり揺れるバラード、演歌、声楽。重厚で感情的な印象
中くらい1秒5〜6回、半音弱の幅ジャンルを問わず使いやすい基本形

浅いとは、揺れ幅が小さいこと。浅いビブラートとは、揺れ幅が小さく控えめなビブラートのことです。浅くて早いビブラートはさりげなく、歌詞を邪魔しません。一方、深いビブラートは存在感が強く、ロングトーンの聴かせどころで効果を発揮します。浅い・深いのどちらが上手いということはなく、両方を使い分けられるのが理想です。

揺れの速さと深さの組み合わせによるビブラートの印象 速い ← 揺れの速さ → ゆっくり 浅い 深い 浅くて速い 軽く華やか 深くてゆったり 重厚・感情的 基本形 速すぎるとちりめん、遅すぎるとふらつきに
速さ(横)と深さ(縦)の組み合わせで印象が変わる。中央の1秒5〜6回・半音弱が基本形

ちりめんビブラートとは

ちりめんビブラートとは、細かく速い揺れが不規則に続くビブラートのことです。布の「ちりめん」の細かいしわにたとえた呼び方で、喉を締めて揺らしたときに起こりやすく、一般には「コントロールできていない揺れ」として直す対象になります。ただし、あえて個性として使う歌手もいて、細かい揺れが独特の味わいになっている例もあります。自分の揺れがちりめんになっていると感じたら、速さを落とし、喉の力を抜いてゆっくりした揺れから作り直しましょう。

こぶし・しゃくり・フォール・フェイクとの違い

ビブラートと混同されやすい歌唱テクニックとのちがいを整理します。「ビブラートみたいなやつ」と言われる揺れが、実はこぶしだったということもよくあります。

こぶし
音から音へ移るときに、一瞬だけ音程を上下させて節を回す装飾です。ビブラートがひとつの音を伸ばしながら周期的に揺らすのに対し、こぶしは短く1〜2回だけ動かす点が違います。演歌では両方を組み合わせることが多く、詳しくはこぶしの回し方で解説しています。
しゃくり
目的の音より低いところから、ずり上げるように音に入る技法です。しゃくりの出し方(しゃくり出し方)は「音の入り口」、ビブラートは「伸ばした音の途中から終わり」と、使う位置が違います。
フォール
音の終わりで音程を下に落とす技法です。ビブラートで伸ばした音の最後をフォールで抜く、という組み合わせもよく使われます。
フェイク
原曲のメロディーを崩して即興的に歌うことです。フェイクの中でビブラートを使うことはありますが、フェイクはメロディーの変化、ビブラートは音程の揺れで、別のものです。

カラオケ採点では、こぶし・しゃくり・フォールとビブラートはそれぞれ別の技法として検出されます。

裏声(ファルセット)のビブラート

ビブラートは地声だけでなく、裏声(ファルセット)やミックスボイスでもかけられます。裏声は声帯が薄く軽い状態なので、地声よりも揺れが作りやすいと感じる人もいます。高音のロングトーンで揺らせると表現の幅が大きく広がるため、地声で揺れの感覚をつかんだら、裏声でも同じ練習をしてみましょう。

ビブラートの練習方法|メトロノームとアプリで上達する

ビブラートの練習は、1回に長時間やるより、毎日5〜10分を続けるほうが効果的です。ここでは、ビブラートができるようになりたい人向けに、家でできるトレーニングメニューと、上達を確認する方法を紹介します。

基本の練習メニュー(1日10分)

  1. ロングトーン(2分):楽な高さの「あ」で10秒まっすぐ伸ばす×5回
  2. 息の波(2分):犬が浅く速く息をするように「ハッハッハッ」と吐くドッグブレスで息を波打たせ、つなげて滑らかにする
  3. 音程の往復(3分):半音差の2音をメトロノームに合わせて往復する
  4. 後がけ(3分):まっすぐ3秒伸ばしてから2秒ビブラート、を高さを変えて繰り返す
1日10分のビブラート練習メニューの時間配分 ロングトーン 2分 息の波 2分 音程の往復 3分 後がけ 3分 合計10分を毎日続ける
ロングトーンと息の波で土台を作り、後半の6分で音程の往復と後がけを練習する

メトロノームで速さをそろえる

揺れの速さをそろえるには、メトロノームを使うのが確実です。テンポを60(1秒1拍)に設定し、1拍に2回往復するところから始めます。慣れたら1拍3回、4回と増やし、1拍5回前後で安定すれば、歌で使えるビブラートの速さになります。テンポを上げるのではなく、同じテンポで1拍あたりの回数を増やすのがポイントです。

練習アプリ・サイトで判定・測定する

ビブラートがかかっているかを客観的にチェックするには、音程をグラフで表示するアプリが役立ちます。ピッチ測定アプリやカラオケ採点アプリの多くは、歌った音程を線で表示してくれるので、ビブラートがかかっていれば線が波打って見えます。揺れの幅が一定か、速さがそろっているかも目で確認できます。

  • ピッチ(音程)測定アプリ:揺れの幅と中心の音程を確認できる
  • カラオケ採点アプリ:ビブラートの判定や秒数が表示されるものもある
  • 録音アプリ:聴き返して、自然に聞こえるかを耳で確認する

アプリの判定はあくまで目安です。診断結果が良くても聴いて不自然なら直す、判定されなくても自然に聞こえるなら問題ない、という順番で判断しましょう。

どのくらいでできるようになる?

ビブラートがどのくらいでできるようになるかは個人差が大きく、ロングトーンが安定している人なら数日〜数週間で揺れの感覚をつかむこともありますし、数か月かかる人もいます。できるようになった後も、曲の中で狙ったところにかけられるまでにはさらに練習が必要です。上手くなる方法の近道は、正しいフォームで毎日少しずつ続けること、そして自分では判断しにくい力みや揺れの癖を、ボイストレーナーに直接見てもらうことです。

カラオケ採点のビブラート|DAMのタイプ(ボックス型A-1〜C-3)と回数

カラオケでビブラートを気にする人の多くは、採点画面に出る「ビブラート」の回数やタイプが気になっているはずです。カラオケ採点では、ロングトーンの中で一定の揺れが続くとビブラートと判定され、回数や合計秒数、タイプが表示されます。ここではDAM(ライブダム)とJOYSOUNDの採点でのビブラートの扱いを解説します。採点の仕様は機種やバージョンで変わるため、細かい条件は各社の公式サイトで最新情報を確認してください。

DAMのビブラートタイプの種類とボックス型とは

DAMの精密採点シリーズ(LIVE DAM Ai や LIVE DAM WAO! などの機種で使える採点)では、判定されたビブラートが「タイプ」として表示されます。タイプは大きく、揺れ幅が一定の「ボックス型」と、それ以外の型に分かれます。DAM公式の開発者インタビューによると、精密採点DXではボックス型以外の5種を追加し、ビブラートを使わない「ノンビブ形」も含めて全部で15種類になっています。

ボックス型とは、揺れ幅が一定のビブラートのことで、A-1 から C-3 までの9種類があります(A1、B2 のようにハイフンなしで書かれることもあり、並べると A1・A2・A3・B1・B2・B3・C1・C2・C3 です)。アルファベットと数字の組み合わせで揺れ方を表し、DAM公式の精密採点Ⅱの説明では、アルファベット(A〜C)が揺れの周期、数字(1〜3)が振幅(揺れ幅)です。DAM★とも精密採点の公式解説では、Aは速く小刻みに揺らす「ちりめんビブラート」、BはPOPSで最も多く使われる標準タイプ、Cは大きくゆったり揺らす演歌やバラード向きのタイプとされています。数字は大きいほど揺れが深いと解説されることが多く、揺れ幅がしっかりある -2・-3 のタイプが高く評価されやすいとされていますが、どのタイプが評価されやすいかについて公式の説明はありません。

DAMのボックス型ビブラート9タイプの並び 速い ← 周期 → ゆったり A B C 浅い 深い A-1 B-1 C-1 A-2 B-2 C-2 A-3 B-3 C-3 緑=揺れ幅があり高評価とされやすいタイプ
ボックス型は周期(A〜C)と振幅(1〜3)の組み合わせで9タイプ(DAM公式の区分)。浅い・深いの向きと緑の評価されやすさは一般的な解説に基づく

ボックス型以外のタイプは、揺れ方が一定でないビブラートです。DAM公式では「上昇形」のように「形」の字で書き、記号はD〜Hが割り当てられています(ビブラートを使わないノンビブ形はN)。一般には「上昇型」「拡張型」のように「型」と表記されることもあります。

タイプ記号揺れ方
上昇形D揺らしながら音程が上がっていく
下降形E揺らしながら音程が下がっていく
縮小形F揺れ幅がだんだん小さくなる
拡張形G揺れ幅がだんだん大きくなる
ひし形H揺れ幅が大きくなった後に小さくなる

上昇形・下降形は揺れの中心が音程からずれている状態なので、まっすぐの音程を保つ練習で直ります。拡張形やひし形は、後がけのビブラートを自然にかけたときにも出やすい形で、必ずしも悪い揺れではありません。ボックス型B-1のように浅いタイプばかり出る、B3の出し方を知りたい、狙ったタイプを出したい場合は、メトロノームで速さを、半音往復の大きさで幅を調整する練習が有効です。

回数・秒数と加点の関係

採点結果には、ビブラートが何回かかったか、合計何秒かかったかが表示されます。短すぎる揺れはビブラートと判定されず、合計が1秒に満たないとビブラートの評価が0になるという解説もあります。判定に必要な秒数について、DAM公式の記述はありません。ビブラートが表示されない、回数が2回・2個程度しか出ないという場合は、揺れが短いか、速さや幅が一定になっていない可能性があります。

1曲で何回かかるのが平均か、平均回数の公式な数字はありません。回数はロングトーンの多さに左右されるため、ゆったりした曲なら20回、30回、40回、60回、70回、80回、90回と増えやすく、テンポが速い曲では少なくなります。カラオケで100回、150回、200回と大きな回数が出るのは、伸ばす音が非常に多い曲で、ほぼすべてのロングトーンに揺れをかけた場合です。SNSでは300回を超えた、といった回数の最高記録や世界記録が話題になることもありますが、機種や曲の条件が違うため比べられる公式記録ではありません。

点数を上げたい場合、ビブラートは加点要素の一つですが、減点を防ぐ音程の正確さのほうが点数への影響は大きいのが一般的です。ビブラートを増やすより、まず伸ばす音の音程を安定させ、その上で語尾に2〜3秒の揺れを加えるのが、点数が上がるカラオケのコツです。

JOYSOUNDの採点とビブラート

JOYSOUNDの分析採点では、こぶし・しゃくり・ビブラートなどが「テクニック」として評価され、ロングトーンの安定性も別の項目で見られます。評価の細かい基準は機種ごとに違いますが、揺れの速さと幅がそろったビブラートが評価されやすいという考え方はDAMと共通です。

ビブラートの練習曲・出しやすい曲(男性・女性・アニソン・ボカロ)

ビブラートを出しやすい曲、かけやすい曲には共通点があります。テンポがゆったりしていて、語尾をロングトーンで伸ばすフレーズが多い曲です。伸ばす音が多いほどビブラートを入れやすく、カラオケでもビブラートがたくさん出る曲、いっぱい出る曲になります。逆に、テンポが速く言葉が詰まった曲は揺らす時間がないため、練習曲には向きません。

「ビブラート出しやすい曲」のほか、「出やすい曲」「入れやすい曲」「入りやすい曲」「取りやすい曲」「つけやすい曲」「つきやすい曲」「やりやすい曲」「歌いやすい曲」「ビブラートよく出る曲」など、いろいろな言い方で探されますが、条件はどれも同じです。カラオケ曲を選ぶときは、この条件に当てはまるかで判断しましょう。

練習曲の選び方

  • 自分の音域に収まる曲:高すぎる音で揺らそうとすると喉が力みます。キーを下げて歌ってもかまいません。
  • サビの語尾が長い曲:まずはサビの最後の音だけで練習すると、つけやすい・入れやすい場所がはっきりします。
  • 最初はバラード、慣れたらミドルテンポ:ゆっくりの曲で揺れを作れたら、少し速い曲の短いロングトーンで練習します。

ビブラートがめっちゃ出る曲を選べば採点の回数は増えますが、練習として大切なのは回数より、ひとつひとつの揺れがそろっていることです。

おすすめの練習曲一覧

ロングトーンが多く、ビブラートを入れやすいとされる曲をジャンル別にまとめました。いずれもゆったりしたテンポで、語尾を伸ばす場面が多い曲です。

区分曲名(アーティスト)練習のポイント
男性向け桜(コブクロ)サビの語尾のロングトーンでゆったり揺らす
男性向けひまわりの約束(秦基博)中音域で浅めのビブラートを入れる練習に
男性向け瞳をとじて(平井堅)静かなフレーズの語尾で後がけを練習
女性向け雪の華(中島美嘉)サビの伸ばす音で深めのビブラート
女性向けハナミズキ(一青窈)語尾を伸ばすフレーズが多く回数を重ねやすい
女性向けFirst Love(宇多田ヒカル)細かいビブラートの聴き比べと練習に
アニソン炎(LiSA)力強いロングトーンに揺れを乗せる
ボカロ曲メルト(supercell)ボカロの中では伸ばす音が多く練習しやすい
演歌川の流れのように(美空ひばり)ゆったりした深いビブラートの手本
最近のJPOPドライフラワー(優里)静かなバラードで語尾の揺れを練習
合唱曲翼をください揃った揺れを意識してロングトーンを伸ばす

ビブラート出しやすい曲を男性が探すなら、表の男性向けの曲が出やすい曲の基本です。男の人が練習するなら、原曲キーが女性曲でもキーを下げれば十分使えます。同じく女性が男性曲を練習する場合も、キーを上げて自分の音域に合わせましょう。

ビブラートがいらない曲もある

アップテンポのロック、ラップ、語りかけるような歌い方の曲では、ビブラートを入れないほうが曲の雰囲気に合うことがあります。どんな曲にもかけるのではなく、「この曲はまっすぐ歌う」と判断できることも表現力のひとつです。ビブラートがえぐい、すごい曲と言われる曲は、たいてい曲調とビブラートの深さがぴったり合っている曲です。

ビブラートが上手い歌手・特徴的な歌手

ビブラートが上手い人の歌を聴くと、揺れの速さや深さが曲やフレーズごとに変わっていることがわかります。ここでは、ビブラートの使い方に特徴があるとよく言われる歌手を、タイプ別に紹介します。すごい歌手、すごい人の真似をするときは、揺れを「どこで」「どのくらいの速さで」かけているかに注目して聴くのが上達のコツです。

細かいビブラートを使う歌手

宇多田ヒカル
細かく速いビブラートを多用する歌い方で知られ、女性がビブラートを練習するときの手本としてよく挙げられます。フレーズによって揺れの種類を使い分けている点も聴きどころです。
大森元貴(Mrs. GREEN APPLE)
ミセスのボーカル。伸ばし始めはまっすぐ、後半から細かいビブラートをかける歌い方が特徴として解説されることが多く、ファルセットを含む広い音域で揺れを使いこなします。

深いビブラートと演歌の歌手

演歌では、ゆったりした深いビブラートにこぶしを組み合わせて感情を表現します。美空ひばり、五木ひろし、三山ひろしといった演歌歌手の歌唱は、語尾の長いビブラートの手本としてよく聴かれています。ビブラートの深さと、音が揺れ終わるまでの息のコントロールに注目すると参考になります。

ちりめんビブラートの歌手

ちりめんビブラートで知られる歌手の代表が中島みゆきです。本人のラジオ番組でも、自身の細かい揺れが「ちりめんビブラート」と呼ばれて話題になってきました。一般には直す対象とされることが多いちりめんビブラートも、歌手の個性として定着すると唯一無二の表現になるという例です。

ビブラートをほとんど使わない歌手

あいみょんは、ビブラートをあまり使わない歌手として知られています。フレーズの語尾をまっすぐ伸ばしたり、フォールや息を抜くように切ったりすることで、さっぱりとした独特の印象を作っています。ビブラートをしないのはできないからではなく、曲の世界観に合わせて選んでいる表現です。

このように、ビブラートは多く使えば上手いというものではありません。歌い手や歌手の上手さは、揺れの量ではなく使いどころで決まります。好きな歌手の歌を録音と聴き比べて、ビブラートの入れ方を真似してみましょう。

「ビブラート」がタイトル・歌詞に入った曲

「ビブラート」という言葉は、曲のタイトルや歌詞にも使われています。声の震えが感情の揺れを表すことから、歌詞のモチーフとして選ばれることが多い言葉です。ここでは検索されることの多い曲を紹介します。

グラスハート「Vibrato」(TENBLANK / OVER CHROME)

Netflixドラマ『グラスハート』の第6話で劇中歌として歌われたのが「Vibrato」です。作中のバンドであるTENBLANK(テンブランク)とOVER CHROMEのコラボ楽曲で、佐藤健と菅田将暉(すだまさき)の2人が歌うシーンが話題になりました。作詞は清竜人、作曲は飛内将大が手がけています。

歌詞では、震えてしまう声をそのまま「ビブラート」にして歌う、という情景が描かれています。技術としてのビブラートではなく、感情があふれて声が揺れることを重ねた表現で、ビブラートという言葉の持つイメージをうまく生かした曲です。ライブバージョンの「Vibrato(Live Ver.)」は配信リリースされ、カラオケでも歌えるようになっています。

扇風機ビブラート(Yukopi feat. 歌愛ユキ)

「扇風機ビブラート」は、ボカロPのゆこぴ(Yukopi)が歌愛ユキを使って制作したボカロ曲です。歌詞(lyrics)は、扇風機の前で声を出すと声が揺れて聞こえる、という誰もが経験したことのある遊びをモチーフにした、ユーモアのある夏の曲です。扇風機の風で声が震える現象は、音量が細かく揺れるトレモロに近いものですが、「ビブラート」と呼ばれて親しまれています。

ほかにも「ビブラート」が出てくる曲

クレイジーケンバンドの「実演!夜のヴィブラート」のように、「ヴィブラート」表記をタイトルに使った曲もあります。ビブラートを題材にした曲の歌詞を読み比べると、「揺れ」「震え」が恋心や緊張、ためらいの表現として使われていることがわかります。歌詞の意味を味わいながら、実際に歌の中で揺れを表現してみるのも楽しい練習になります。

楽器のビブラート(バイオリン・ギター・管楽器)のかけ方

ビブラートは歌だけでなく、楽器の演奏でも使われる表現です。楽器のビブラートも「音程を周期的に揺らす」という点は歌と同じで、揺らし方が楽器ごとに違います。歌のビブラートを練習している人は、楽器のかけ方を知ると「揺れの速さと幅をそろえる」感覚がつかみやすくなります。

弦楽器(バイオリン・チェロ・二胡・ギター)

バイオリン(ヴァイオリン)やチェロなどの弦楽器では、弦を押さえた左手の指を、指板の上で前後に揺らしてビブラートをかけます。揺らす部位によって、指・手首・腕のビブラートがあり、バイオリンは手首、チェロは腕全体を使う奏者が多いといわれます。練習ではメトロノームに合わせてゆっくり往復するところから始め、少しずつ速くしていくのが基本で、ここは歌の練習と共通しています。揺れが細かくなりすぎると、弦楽器でも「ちりめん」と表現されることがあります。

二胡は指板がないため、弦を押さえる指の圧力や位置を変えて音程を揺らします。ギターでは、弦を押さえた指を上下に小刻みに動かして音程を揺らすのが基本のコツで、弦を持ち上げて音程を上げるチョーキングを細かく繰り返すイメージです。エレキギターでは、アーム(トレモロアーム)を使って揺らす方法もあります。

管楽器(フルート・サックス・トランペットなど)

楽器主なかけ方練習のコツ
フルート息の圧力を揺らす「ハッハッハッ」と息を区切る練習から、つなげて波にする
サックス顎(下唇)の力を緩めたり締めたりする「ワウワウ」と顎を小さく動かし、ゆっくりから速くする
クラリネット顎や息クラシックではあまりかけず、ジャズやポップスで使うことが多い
オーボエ息の圧力を揺らすフルートと同じく、息の波を安定させる
トランペット右手で楽器を軽く揺らす・唇で揺らす揺らしすぎて唇の位置がずれないように注意
ホルン息や唇クラシックではかけない場面が多く、曲に合わせて判断する
トロンボーンスライドを小さく動かす・唇で揺らすスライドのビブラートはジャズで多く使われる
ユーフォニアム顎や唇で揺らす歌うようなメロディーで深めにかけることが多い

フルートやオーボエのように息で揺らす楽器は、歌の「横隔膜ビブラート」と同じ感覚で練習できます。サックスのように顎で揺らす楽器は、歌の顎ビブラートに近い方法です。どの楽器でも、楽器が揺れるほど、体が大きく揺れるほど動かす必要はなく、音だけが滑らかに揺れる状態を目指します。

楽器ごとのビブラートの揺らし方の分類 指 バイオリン・チェロ・二胡・ギター 息 フルート・オーボエ 顎・唇 サックス・クラリネット・ユーフォニアム 手・スライド トランペット・トロンボーン
弦楽器は指、フルートなどは息、サックスなどは顎や唇、トランペットやトロンボーンは手やスライドで揺らす

EWI・プラスチックサックスなど

電子管楽器のEWI(EWI SOLOなどのモデルがあります)では、マウスピースを噛む強さを検知するセンサーなどでビブラートをかけられます。また、「Vibrato」はタイで作られているプラスチック製サックスのブランド名にもなっていて、「ビブラート サックス」で検索するとこの楽器が出てくることがあります。演奏技法のビブラートとは別物なので、調べるときは区別しましょう。

ボカロ・DTMでのビブラート(VOCALOID・Synthesizer V・プラグイン)

ボカロ(ボーカロイド)や歌声合成ソフトでは、ビブラートを数値で設定します。人間の歌と同じく、伸ばす音の後半に、適度な速さと深さで揺れを入れると自然に聞こえます。ソフトの仕組みを知ることは、自分の歌のビブラートを客観的に理解する助けにもなります。

歌声合成ソフトの設定

多くの歌声合成ソフトでは、ビブラートを「かけ始めるタイミング(長さ)」「深さ(揺れ幅)」「速さ(周期)」の3つで調整します。ソフトごとの特徴は次の通りです。

ソフトビブラートの扱い
VOCALOID6(VOCALOID6 Editor)ノートごとにビブラートの種類・長さ・深さ・速さを設定できる
Synthesizer Vノートごとに開始位置・深さ・周波数などを調整。深さを0にすればビブラートを消すこともできる
UTAUノートのプロパティでビブラートの長さ・周期・深さを数値で指定する
VoiSona自動で付く揺れを調整したり、ピッチを直接描いて編集したりできる
Piapro Studio用意されたビブラートのパターンを選んで適用できる

自然に聞かせるコツは、すべてのノートに同じビブラートをかけないことです。短い音にはかけず、長い音の後半だけに入れる、サビの最後だけ深くする、といった使い分けで、人が歌っているような表情になります。自動で付くビブラートが不要なら、深さを0にするか、該当ノートのビブラートをオフにして消すことができます。

歌声合成ソフトでビブラートを決める3つの値 ここから揺れ始める(開始位置) まっすぐ 速さ(周期) 深さ(揺れ幅)
1つのノートの中で、揺れ始める位置・速さ・深さの3つを決めるとビブラートの形が決まる

DAW・プラグイン・エフェクターのビブラート

DTMでは、LFO(低周波発振器)で音程を周期的に揺らすことでビブラートを作ります。シンセサイザーでは、LFOの出力をピッチに割り当てれば、どんな音色にもビブラートがかかります。無料のソフトシンセ Vital や、無料のDAW LMMS、Logic Pro などのDAWに付属する音源でも、LFOやビブラートのパラメーターで同じことができます。VSTなどのプラグインにはビブラート専用のエフェクトもあり、フリーのものも配布されています。

ギターやキーボードでは、ビブラート効果を出すエフェクター(ペダル)も使われます。TC Electronic などのメーカーからビブラート系のペダルが発売されているほか、Roland のギターアンプ JC-120(JC120)のように、アンプにビブラート機能を内蔵したモデルもあります。

録音したボーカルの編集では、Waves Tune のようなピッチ補正プラグインで音程を整えるとき、補正を強くかけすぎると自然なビブラートまで消えてしまうことがあります。ビブラート部分は補正を弱めるなど、揺れを残す設定にするのがポイントです。

ビブラートの記号・文字での表現と「ビブラートに包む」

最後に、楽譜での記号の書き方や、文字での表し方、言葉としての「ビブラート」の使われ方を紹介します。

楽譜の音楽記号・マーク

楽譜では、ビブラートをかける音の上に「vib.」と書くか、波線(〰のような横に長い波のマーク)で示すのが一般的です。逆にビブラートをかけない指示は「senza vibrato(センツァ・ヴィブラート)」や「non vib.」と書かれます。クラシックの弦楽器や声楽では、特に指示がなければ奏者の判断でかけるのが普通なので、記号が書かれるのは「ここは特にかけてほしい」「かけないでほしい」ときです。

楽譜でビブラートをかける指示とかけない指示 vib. senza vib. かける かけない
音符の上の「vib.」や波線はビブラートをかける指示、「senza vib.」はかけない指示

カラオケの採点画面でも、ビブラートがかかった部分に波のようなマークが表示される機種があり、どこで揺れが判定されたかを確認できます。

文字・絵文字での表現

SNSやチャットでビブラートを文字で表現するときは、「あ〜〜〜」のように波ダッシュを重ねたり、「〰」の絵文字を使ったりするのが定番です。歌詞カードや台本で「ここは揺らす」と伝える場合も、波線を書き添えると伝わりやすくなります。

「ビブラートに包む」の意味と元ネタ

「ビブラートに包む」は、本来の慣用句「オブラートに包む」(言いにくいことを遠回しにやわらかく伝える)との言い間違いから生まれた言葉遊びです。オブラートは薬を包んで飲みやすくする薄い膜のこと、ビブラートは声を揺らす技術のことなので、「ビブラートに包んで言って」「ビブラートに包めよ」と言われたら、演歌歌手のように声を震わせて話すことになってしまいます。言い間違いのエピソードがSNSや掲示板(なんJなど)で広まり、ネタとして定着しました。意味を正しく使うなら「オブラートに包む」です。

名前が似ている言葉

  • タイルビブラート(タイル用ビブラート):タイル張りの施工で使う振動工具の名前です。振動でタイルを下地に密着させる道具で、歌のビブラートとは関係ありませんが、「振動させる」という語源は同じです。
  • ビブラーバ:ポケモンの名前です。ビブラートとは別の言葉ですが、名前の響きが似ているため一緒に検索されることがあります。

よくある質問

ビブラートって何ですか?
ひとつの音を伸ばしているあいだに、音程を周期的に上下させて声を波のように揺らす歌唱テクニックです。1秒に5〜7回前後、上下に半音弱の揺れが自然な目安とされます。
ビブラートを出すコツは?
まず揺れのないロングトーンを安定させ、半音差の2音をゆっくり往復するところから始めることです。いきなり速く揺らそうとせず、速さをそろえたまま少しずつ上げていくと、喉が力まずに自然な揺れになります。
ビブラートを効かせるには?効かせ方のポイントは?
伸ばし始めはまっすぐ歌い、音の後半から揺らす「後がけ」にすると、ビブラートがはっきり効いて聞こえます。すべての語尾にかけず、サビの最後など聴かせどころに絞るのがポイントです。
横隔膜と喉、どちらでかけるのが正しいですか?
どちらが正解というものではありません。息の圧力で揺らす方法は喉に負担がかかりにくく初心者向き、喉で揺らす方法は速く自然な揺れを作りやすいという特徴があります。最初は息で揺れの感覚をつかみ、慣れたら喉の力を抜いた自然な揺れを目指すのが一般的です。
ビブラートがあるとカラオケの点数は上がりますか?
多くの採点機能でビブラートは加点の対象ですが、点数への影響は音程の正確さのほうが大きいのが一般的です。音程を安定させたうえで、ロングトーンの語尾に2〜3秒の揺れを加えると点数につながりやすくなります。

まとめ

ビブラートは、伸ばした音の音程を一定の速さと幅で揺らすテクニックです。要点をまとめます。

  • 揺れの目安は1秒に5〜7回、上下に半音弱。揺れの中心が音程からずれないことが大切
  • 出し方は「まっすぐなロングトーン → ゆっくり往復 → 速さをそろえて上げる」の順番
  • かける場所は横隔膜(息)・喉・顎の3種類。初心者は息から、力みは禁物
  • できない原因は、ロングトーンの不安定・力み・コントロール不足・揺れが聞き取れないことのどれか
  • カラオケ採点ではDAMのボックス型A-1〜C-3などのタイプで判定される。ただし点数は音程が最優先
  • ビブラートは多いほど良いわけではなく、曲に合わせて「かける・かけない」を選べることが上達のゴール

ビブラートは、自分では揺れの速さや喉の力みに気づきにくいテクニックです。独学で伸び悩んだら、ボイストレーナーに直接聴いてもらうのが近道です。ボイトレ教室検索では、都道府県・市区町村・駅からお近くのボイストレーニング教室を探せます。体験レッスンで、あなたのビブラートの癖を見てもらうところから始めてみてください。